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弁証論治を用いたステロイド離脱回復の漢方治療

学会等の学術発表実績

「弁証論治を用いたステロイド離脱回復の漢方治療」

第21回日本補完代替医療学会・第62回比較統合医療学会の特別講演(抄録) 2018.11.11
中医学は整体観と弁証論治という独自の理論体系を持つ。整体観とは「全ての物は1つに統一され互いに関連し合う」、弁証論治とは「視覚、聴覚、嗅覚、触覚を用いた四診から治療を決定する」という考え方である。弁証論治が的確に行われれば副作用は無い。

ステロイドは中医学的には純陽壮火の温熱薬で、人体の五臓陰陽の根本である腎に関与している。投薬すると多飲多尿多食、脱毛、筋肉虚弱、腹囲膨満などが起こり、長期投与により色素沈着、皮膚石灰沈着が起こる。しかし、中医学基礎理論に従い弁証論治を行うことでステロイド剤の離脱・副作用消失・回復が可能である。ステロイド剤の種類、投与量、投与期間、既往歴、現病の四診から弁証論治を行い、副作用を予測して漢方薬を併用する。
柴犬の雌、13才が肥満細胞腫、下痢気味、筋力低下でプレドニゾンを服用、当院を訪れたが、弁証論治を用いた漢方治療によって症状が改善した。
日本の医療では西洋医学の発展に伴い素晴らしい治療結果が出るようになりました。その陰で、西洋薬の慢性的な服用による副作用・医原性疾患の発現、高齢や体が弱っている状態での強い薬物治療や手術後の体調悪化、西洋治療の限界による治療放棄など、様々な問題が浮き彫りになっています。当院では、この問題に対して中医学の考え方を取り入れることで解決に導いています。

中医学は3000年の歴史があり、整体観と弁証論治を特徴とし、独自の理論体系を持つため治療の再現が可能です。整体観とは、全てのものは一つに統一され互いに関連しあうという考えに基づき、人も動物も自然界に存在し健康と自然界の変化は密接に関係する、心身は統一体であり臓器は互いに協力し合って生命活動を行うという考えのことです。弁証論治とは、中医学の診断治療方法で、視覚を用いた望診・聴覚と嗅覚を用いた聞診・質問に答える問診・体に触れる切診の四診を行い、病気の本質や変化していく病状をとらえて治療方針を決定します。体質や病状に合った治療を行うので、弁証論治が的確に行われていれば副作用は見られません。また、根本的な病因(生活面、精神面などにも)にも踏み込んで治療を行うので体質改善にもつながり、様々な症状・疾患が同時に治っていくことが多く、新たな疾患予防にも繋がります。治療の目的も、検査値を改善することよりも、心身の偏りを整えて自己調整力を回復して苦痛を取り除いて病気と共存したり闘う力を養うことを大切にしています。そのため、症状が改善した後に検査値が改善していくこともあります。

今回の講演では、獣医療で非常によく見られるステロイドの副作用を伴ったステロイド適応疾患での漢方治療についてお話ししたいと思います。

ステロイドは、西洋医学的には、抗炎症・免疫抑制などの作用を有し、炎症・自己免疫疾患・アレルギーなど様々な難治性疾患の治療に希望を与えています。ただし、長期使用後には下垂体―副腎皮質系のフィードバック抑制により様々な副作用・合併症・リバウンド現象を生じ、犬ではクッシング症候群、猫では糖尿病を生じやすく、犬猫共に免疫低下などにより数年後には死に至るが、現代医学ではこれらに対する有効な手段はないとされています。中医学的には、ステロイドは純陽壮火の温熱薬で、人体の陰陽消長・平衡作用つまり五臓陰陽の根本である腎に関与します。投薬すると、一時的な清熱解毒・除湿の後に、初期大量開始期は陰虚火旺、減量維持期~中止期は陰陽両虚~陽虚と気血両虚、長期大量維持期は陰陽失調と脾腎両虚に加えて瘀・痰・湿・熱が結びつき複雑な病態となります。

講演では、当院で漢方治療したステロイドの副作用を伴った症例(肥満細胞腫、ステロイド反応性脳脊髄炎、慢性咀嚼筋炎、多中心型リンパ腫、血小板減少症、前庭障害、再発性麦粒腫など)を比較検討して、既存の中医学説とは異なる見解を示し、体質を重要視したステロイドの離脱回復さらに副作用の予防について考察したいと思います。さらに、弁証論治を用いた漢方治療により、副作用消失、ステロイド離脱、ステロイド適応疾患を回復させていく流れを、中医学基礎解説を交えた形で、1~2症例紹介させていただきたいと思います。

最後に、今回の講演が人・動物の医療がより良い形になる一助になることを切に願っています。

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