猫の歯肉口内炎は、明確な原因が分かっていない病気です。
治療は、手術で全部の歯を抜く方法を含め、あらゆる西洋治療を行っても治らない猫も多い難病の1つです。
ステロイドや免疫抑制剤などが一時的に有効なこともありますが、長期投薬では効果が落ちて副作用の方が目立ち命に関わる病気になる場合があります。
オス猫のシリウスちゃんも、8才の時に口の中が赤く腫れる歯肉口内炎になり、口の痛みで食べれなくなりました。
様々な西洋薬治療を行い、手術で歯を全て抜きましたが、口の炎症・腫れ・痛み・出血、頬の腫れ、ひどいよだれ、軟便、食欲低下が続き、5.6kgの体重が3.8kgまで減りました。
13才になり、血液検査で貧血気味と白血球が少ない状態が続き、飼い主さんの希望により漢方治療を始めました。
漢方治療の診断では、小さい頃より食事を与えすぎて時々吐くことを聞いて、常に胃に餌が留まって胃の熱を生じている慢性胃炎状態が原因で、口の熱の炎症を生じたと考えました。これは、中医学の「脾は口に開竅する」つまり脾胃(西洋医学の胃腸に近い働き)の状態は口に現れる考え方から導きました。
胃の熱を抑えると共に腸の冷えを暖める漢方薬を中心に服用することで、15才になった現在は、歯肉口内炎は完治、食欲正常、便回復、体重も5kgの適正体重となり、毛づやも良くなり若返った様子です。また、貧血改善、白血球も増え、無かった舌苔も見られ胃気が回復したようです。
半年前からは、高齢に伴う心腎機能低下に対応する漢方薬に変更し、cre2.2が1.8の正常値、心雑音2/6が心雑音消失へとコントロールしています。
今後も飼い主様には食事の面で内容・量を注意していただき、天寿を全うするまで元気に食事ができて楽しく過ごせるお手伝いができればと思っています。
シリウスちゃんは、2021年1月27日に18才で苦しむことなく永眠しました。最後の3年間は口内炎がなく食事が普通にできて幸せだったと飼い主様におっしゃっていただきました。