治療法があまりないとされる腎臓病の犬猫たちが少しでも元気で長生きできるように、10年以上にわたる腎臓病の漢方治療経験と大学院での腎臓病研究の中で見出してきた見解をお伝えしたいと思います。
1. 腎臓病は全身病であること。
著名な腎臓内科医の文献でも、「腎臓は全身の変化をモニタリングしてホメオスタシスを維持する管制塔の役割を担い、他臓器疾患と腎機能は互いに影響を及ぼす。そのため、一見腎臓と関連のない他臓器の症状が尿毒症として現れたり、1つの臓器にのみ注視して診療を進めると全体のバランスを崩し予後を短縮することもある」とあります。
漢方治療ではいずれの疾患でも全身の臓器連関を考えて治すので、腎臓病でも回復しやすいのだろうと考えられます。
私の研究では特に腸腎連関をターゲットにした経腸投与で効果を得ています。
2. 慢性腎臓病初期での西洋治療はあまりない。
西洋治療は十分な飲水やリンなどの食事の管理が基本で、降圧剤の使用は腎臓病へのリスクもあるため慎重使用となっています。
漢方治療では腎臓病初期から病状に合わせて様々な調合が可能で腎臓病リスクはまれです。
3. 腎臓病末期でも西洋治療は限られている。
西洋治療では人工透析(血液透析・腹膜透析)や腎移植があるが、犬猫では麻酔リスク・有効性が不確実・合併症・高額などの理由で一般的な治療法に至っていない。
漢方治療では中国の人医療の病院で実施されている漢方薬の経腸投与で、急性腎臓病や慢性腎臓病の急性憎悪による尿毒症を脱することがあります。 私自身もこの方法を近大東洋医学研究所に研究員として留学してきた医師から直接指導を受けて、8年前から犬猫の100例以上で実施しています。詳細は、経腸投与の学会発表とブログを参照して下さい。
犬猫でのさらなる安全性と有効性のエビデンスを得るため現在大学院で研究中です。ラットへの4週間の漢方経腸投与で腸粘膜への影響はない結果でした。
4. 腎臓への負担の少ない治療が必要。
西洋薬は腎臓から排泄する薬剤が多く、薬剤性腎障害(消炎鎮痛剤、利尿剤、抗生剤など)を生じやすい。
漢方薬は腎機能への負担があまりなく、体質や多臓器の病状を同時に治すので全身的な調整を行い体調が安定して寿命が延びることも多い。
5.漢方治療は多くの治療法と併用できる。
漢方薬は、ほとんどの西洋薬、点滴、人工透析、ホメオパシー、ホモトキシコロジーとも併用できます。
初診で必ず確認しているのは、飲水不足、ステージ末期では高蛋白食(鶏肉が多い)、腎臓負担の薬剤投与(多いのは、NSAIDsの鎮痛消炎剤、利尿剤)の有無。200例くらいの腎臓病を診察してきた中で、これらが急性憎悪の原因として最も多いことをお伝えしたいと思います。
これからも腎臓病の漢方治療について新しい経験や知見が得られたらupdateしていきたいと思います。

