【直腸透析のQ&A】
Q. どういう効果を示しますか?
A. 尿毒症や慢性腎臓病では、生存する腎糸球体を元気にして尿毒素を排除する腎臓の濾過機能を回復し、尿毒症を治したり慢性腎臓病の進行を遅らせます。さらに体質や病状を診て漢方調合することで、蛋白尿、腎性貧血、他臓器の合併症を治したり、体重を増加します。詳細は以下を見て下さい。
「猫の尿毒症に古典的中医学の煎じ薬を用いた浣腸透析」(学術発表)
- 犬(ラブちゃん)の尿毒症・椎間板ヘルニアの漢方直腸透析と鍼灸治療
Q. なぜ肛門から煎じ薬を投薬するのですか?
A. 中国では2000年前から人で行われている煎じ薬を用いた透析方法です。
胃よりも腸粘膜の方が薬の吸収が早く尿毒素を排除する効果が高いので、直腸透析が行われています。
嘔吐してたり内服できない場合でも、治療ができる利点もあります。
Q. どれくらいの日数で効果が出ますか?
A. 尿毒症では、早ければ当日、一般的には1週以内に検査値が改善してくることが多いです。点滴をしても検査値が改善しない、皮下点滴がむくみで残るペットでも効果が出ることがあります。
ただし慢性腎臓病末期で生存する糸球体が少ない尿毒症では、食欲元気をやや回復し苦しみを取り除くのが主体になることも多いです。
Q. 慢性腎臓病初期でも効果がありますか?
A. 検査値がやや悪化で無症状の初期では、漢方薬の内服で腎機能を正常化したり進行抑制をします。
Q. 副作用はありますか?
A. 基本的にはありません。
下剤の作用の生薬を使って便から尿毒素を出すので、あえてやや軟便気味に保つ方が血液中のクレアチニンやリンが下がり腎機能が回復しやすいです。
Q.直腸透析が実施できない場合はありますか?
下剤作用の生薬で尿毒素を排泄するため、下痢の場合は基本的に実施していません。下痢を治してから直腸透析を行うか、尿毒症末期の下痢では直腸透析の時期を過ぎているため内服の漢方薬で緩やかに尿毒素を排泄します。
また、まれに犬で肛門から煎じ液を入れてる途中で力んで液を出してしまう場合があり効果が出にくいです。
Q. 自宅でできますか?
A. 慣れると大抵の飼主様は自宅で行っています。ペットが嫌がる場合でもバスタオルでくるんでお尻だけ出してできます。基本的には2人以上が必要です。
自宅でできない場合は、当院あるいは近医で行っていただいてます。
Q. 通院頻度はどれくらいになりますか?
A. 直腸透析の頻度は、尿毒症が重度の場合(リン高値、クレアチニン高値、嘔吐など)では毎日、数値が程々に下がってくると(大体2週以上要する)2~3日に1回、数値と症状が安定すると週1回あるいは漢方内服薬のみになります。また皮下点滴も併用することが多いです。
これらは自宅や近医で行うことも可能ですので、当院への通院は、初診の後は2~3日後に通院(理想的)あるいは電話で病状をお聞きして、その後は週1回が基本です。数値と病状が落ち着けば2週に1回くらいが目安になります。漢方内服薬のみになると月1回が理想的です。
Q. 遠方で通院できない場合は?
A. 漢方調合は、担当漢方医による舌診・脈診や西洋検査値を見て微調整しています。
当院の統計では腎機能の回復や維持ができたのは1例を除いて通院のペットのみです。
現在のところは通院可能のペットのみに直腸透析をさせていただく方針としています。
Q. 西洋治療と併用できますか?
A. 西洋薬やサプリメントは併用可能ですが、使わなくてよいことも多いです。
点滴は直腸透析で軟便にするので併用が多いです。脱水がない場合は点滴なしで検査値が改善することもあります。
一部のリン吸着剤は、直腸に入れた煎じ薬の吸収を悪くするので止めてもらっています。
Q. 費用はどれくらいですか?
A. 3kgの小型犬を例に出します。
初診時は3日分の薬を含めて、西洋検査なし(的確な処方が困難です)では約2万円、必要最低限の西洋検査を実施すると約4万円、一通りの検査を行うと約6万円です。他院での検査データがある場合は減額になります。
毎日通院の再診では、直腸透析と皮下点滴のみの1日分は約6000円、必要時には簡易な西洋検査代が加わります。週1回通院の再診では、簡易な検査と家での直腸透析と点滴の1週分をお渡しすると約2~3万円/週です。
体重や病状により金額が異なりますので、詳細は動物病院へお問い合わせ下さい。
その他の質問については動物病院へお問い合わせ下さい。