犬 トイプードル 14才~現在17才 男の子
けんちゃんは、東京で暮らす人懐っこく抱っこが大好きな男の子。
胆泥と首腰のヘルニアがありましたが症状はなく、13才まで元気に過ごしていました。
14才の誕生日頃に急に冷えたためか嘔吐と黒色の下痢になりました。病院での血液検査でCRE 1.72 BUN53.0でいずれも高値、尿比重は低値、超音波検査で両方の腎臓が小さくなっていて、胆泥が充満し胆汁の流れが悪くなっていました。慢性腎臓病ステージ2の診断で静脈点滴の後に皮下点滴を2週間ほど続けましたが、腎数値は上昇してCRE 2.44 BUN 67.4 P5.7 SDMA17でいずれもさらに高値になりました。
そこで当院の漢方治療を受診されました。冬はファンヒーターにべったりするほどの寒がり、透明鼻水が出る、頻回な点滴をしてるのに腎数値が上昇、舌苔が多いことから、冷えをとる、水分代謝を改善する、軽度の抗炎症作用の漢方調合をしました。徐々に透明鼻水がなくなり、舌苔も正常になり、点滴量が減りました。漢方開始1ヶ月後にはCRE 1.57 BUN 22.5 P4.4 SDMA16になり、体重も増えました。
その後も、くしゃみや目やになどの風邪、膵炎、胆嚢粘液嚢腫などの病状に合わせて調合を変更しながら、他臓器の炎症を鎮めて腎機能回復に努めました。麻酔下での抜歯と歯石除去もできました。
漢方治療を始めて約3年間ほどはステージ2でした。胆嚢粘液嚢腫の進行、視力低下、聞こえにくい、後ろ足の虚弱と共に、慢性腎臓病もステージ3になりましたが尿蛋白は正常値を保ち現在で約1年経過しています。
けんちゃんは体調を崩しても回復が早くいつも元気です。これから先もほがらかな飼主様との生活を楽しく満喫してもらえるように援助できればと思っています。
☆けんちゃんなど腎臓病初期から漢方治療を継続している場合は、延命効果と共に末期の嘔吐や痙攣などの症状が出にくい傾向があります。漢方治療では、腎臓病を全身病として捉え常に他臓器の病状をコントロールしているため、重症化を予防もしくは早く解決しているためかもしれません。ちなみにけんちゃんの漢方薬代は1日150~300円です。
国際獣医腎臓病研究グループの分類での犬の余命は、ステージ2で14.78ヶ月、ステージ3で11.14ヶ月の報告なので、けんちゃんは腎臓病と共存しながら元気で長生きできているようです。
西洋治療では腎臓病初期の治療がないと言われていますが、漢方治療は初期~末期まで病状に合わせて調合を替えながら治療が可能な分野となっています。西洋治療、再生医療、ホモトキシコロジーなど、いずれの治療法とも併用できます。漢方治療を考えられる場合は、腎臓病初期のステージ1~2(CRE 犬~2.8 猫~2.8 SDMA 犬~35 猫~25 )の段階からの開始をお勧めします。