猫 雑種 17~19才 男の子
はるちゃんは、当院の看板猫。2ヶ月令からやってきて大きな病気もなく、同居犬のコロンとケンカしながらもマイペースにのんびりと暮らしていました。
17才の夏頃(’20 7/2)に吐くようになりBUN34.8高値が見られました。秋頃(’20 10/5)には水を飲む量と尿量が増え、BUN50.6さらに高値、CRE1.83高値に、尿比重が低く、慢性腎臓病ステージ2の診断となりました。
早速、腎機能強化や利尿などの作用があり、人医療の腎泌尿器科漢方として多用され、猫ちゃんも飲みやすい味の漢方薬1種類から開始しました。その後、肝数値が上昇したので肝臓と腎臓の両方を治す漢方薬1種類に切り替えました。肝臓が回復後は、はるちゃんの体質を考慮して、水分代謝を改善して抗炎症作用の腎機能を維持する漢方薬1種類に替えました。
しばらく病状は安定していましたが、腎臓病発症から1年2ヶ月後(’21 12/3)に、白色鼻水と共に食欲低下を生じ、BUN97.8高値、CRE3.6高値、P7.1高値で慢性腎臓病ステージ3、WBC59600、尿検査で細菌性膀胱炎が認められました。風邪や膀胱炎による腎臓病の急性憎悪が考えられました。
毎日の皮下点滴と抗生剤の内服を新しく開始しました。1週後に鼻水はなくなりWBC値が半分になりましたが、腎項目の数字は同じ~やや高値になりました。尿毒を便から排泄する漢方薬に変更して、3日後に食べ始め、10日後(’21 12/21)の検査では、BUN101.5高値、CRE3.09高値、P6.5高値で、数値がやや下がりました。
約2週後(’22 1/7)に、鼻が詰まって食欲低下、下腹部皮膚の化膿巣があり、BUN140<高値、CRE5.04高値、P15<高値になり、慢性腎臓病末期のステージ4の尿毒症になりました。皮下点滴、抗生剤と尿毒を尿から出して止痛の漢方薬を内服、尿毒を便から排泄する漢方薬を6日間のみ経腸投与しました。5日後(’22 1/12)には、鼻が通って少し食べ出し、BUN108.9高値、CRE3.40高値、P6.8高値になり、数値がやや下がり慢性腎臓病ステージ3に戻りました。
腎臓の超音波画像を見ると、高齢の末期の腎臓でしたので、週2日の皮下点滴と苦しまず天寿を全うできる漢方治療を続けることにしました。そこから2ヶ月半の間、ほとんど食べないので徐々に寝たきりになり体重も減少していきましたが、程々の顔つきでたまに吐くくらいで病院スタッフにもゴロゴロ鳴きながら穏やかに過ごしていました。痙攣もなく、最終的には老衰のように19才の誕生日(’22 4/3)の頃に天国へ旅立ちました。
☆はるちゃんなど腎臓病初期から漢方治療を継続している場合は、延命効果と共に末期の嘔吐や痙攣などの症状が出にくい傾向があります。漢方治療では、腎臓病を全身病として捉え常に他臓器の病状をコントロールしているため、重症化を予防もしくは早く解決しているためかもしれません。ステージ2で1種類の漢方薬のみ、ステージ3から2種類の漢方薬と基本的に週2回の皮下点滴だけでした。
西洋治療では腎臓病初期の治療がないと言われていますが、漢方治療は初期~末期まで病状に合わせて調合を替えながら治療が可能な分野となっています。西洋治療、再生医療、ホモトキシコロジーなど、いずれの治療法とも併用できます。漢方治療を考えられる場合は、腎臓病初期のステージ1~2(CRE 犬~2.8 猫~2.8 SDMA 犬~35 猫~25 )の段階からの開始をお勧めします。