犬 ミニダックス 13才 女の子
ララちゃんは、お母さん想いの物静かで臆病な女の子。
一緒に暮らしていた犬ちゃんが亡くなった直後に、下あごの口の中に1.5CMの黒色腫瘤が見つかりました。かかりつけ医ですぐに手術をしてもらいましたが、病理検査結果は悪性黒色腫(メラノーマ)でした。悪性黒色腫は進行速度も早く転移もしやすいため、術後1か月未満で再発した腫瘍と共に下あごを切除する手術を勧められました。
ララちゃんのご家族は、続けての犬ちゃんの重い病気の宣告と下あごを切除することへの葛藤で、悲痛な面持ちで当院に来院されました。腫瘍への漢方治療の一般的な目的は抗がん剤や放射線療法による副作用緩和が主体であり、抗がん作用は西洋治療の方が確実ではあることを説明しました。それでも下あごを切除するのが辛いというお話を聞いて思案しました。
その時に、近医の腫瘍科病院での悪性黒色腫のセミナーで、外科手術、放射線治療、化学療法以外に、免疫療法を新しく取り入れ始め、副作用が少ない全身療法でまだ症例数も少ないという話を思い出しました。免疫調整は漢方治療の得意分野でもあるので、中国の人医療で多用される抗がん生薬を含めた処方を組むことにしました。同居犬を亡くしたストレスによる口の炎症を緩和する調合や全身の気血をめぐらせ、免疫力を高めながら、腫瘤という気の滞りを改善する鍼灸治療も併用しました。
漢方鍼灸治療から2か月半後に直径3CM大になった腫瘍を手でこすりつけて出血をするようになりました「写真①」。その1か月後に腫瘍の上層部がちぎれ、根本にふくらみが少し残りました「写真②③」。その2か月後には、根元の腫瘍もなくなりました「写真④」。ララちゃんの回復と共に、心配で心配で不安なお母さんとご家族もお元気になられたご様子でした。
漢方鍼灸治療から1年弱、腫瘍が取れて8ヶ月の現在のところ、見た目には健康優良犬です。
少しでも長くご家族と楽しい幸せな時間を過ごせるよう願うばかりです。
★悪性度の高い腫瘍が漢方鍼灸治療だけで消失した例は当院ではララちゃん1例のみです。学会発表や他院症例でもごく少数だと思われます。
確実な抗がん作用を期待される場合は進行しすぎる前に西洋治療を主体にしていただき、免疫療法や副作用緩和を目的に漢方鍼灸治療を併用受診して下さい。いずれの治療法とも併用できます。
病状的に西洋治療を受けにくい場合に漢方鍼灸治療単独という選択肢もあることを知っていただけたらと思います。